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「すべての子どもたちが地域でしあわせに暮らせるように」
わたしたちは、障害のあるなしにかかわらず、すべての子どもたちが健やかに生活し成長していくことを家族もふくめて応援していきたいと思っています。
医師を志したきっかけ、エピソードを教えてください。
幼い頃、体が弱く、風邪を引けばすぐ肺炎や喘息性気管支炎になり、小学校高学年になるまで入退院を繰り返していました。かかりつけの小児科へ行くと、いつも丁寧に診察してくれる医師がいました。その姿にあこがれて医師への道を志しました。
医師になられてから、これまでの歩みについてお聞かせください。
1998年に京都大学医学部を卒業後、小児科全般の研修を経て、滋賀県立小児保健医療センターで、てんかんや脳性麻痺の子どもたちの治療に関わりました。2003年、京大大学院に戻り、神経の発達や分化に関わる遺伝子の基礎研究に従事しましたが、子どもの発達や成長をしっかり診られる現場への思いが強くなり、2007年、再び小児保健医療センターに帰ってきました。
人工呼吸器などの医療ケアが日常的に必要な子どもたちがNICUや病院から家に帰って家族の力で自宅で生活できるようにサポートする役割に従事するなか、家族の精神的・身体的な負担の大きさを思い知らされることも多く、本人だけでなく家族全体を支援する必要性を感じるようになりました。
クリニックを開業されるに至ったきっかけを教えてください。
2013年に障害のある子どもと家族がともにくつろげる場を提供する「奈良親子レスパイトハウス」に出会い、主治医をしていた子どもと家族を誘い、宿泊行事に参加しました。奈良公園で鹿とたわむれる親子の生き生きとした表情を目の当たりにし、「滋賀県でも同じようなおもてなしができないか」と考え、小児保健医療センター内外の医療関係者らに呼びかけ、2014年に「NPO法人びわこファミリーレスパイト」を立ち上げました。
さまざまな医療的ケアを必要とする子どもと家族にとってハードルの高い宿泊旅行や初詣、運動会、海水浴などを企画し、多くの人が少しずつでもサポートすることで、子どもたちが自分の力を精いっぱい発揮して、みんなができることを同じように経験できること、それが子ども自身の成長につながることを実感しました。びわこファミリーレスパイトの活動を継続していく中で、もっと医療の面でも日常的により家族のニーズに応えられるような取り組みができないかという思いと、また一方で初心に帰って私自身が子どもの頃に診てもらったお医者さんのような地域の子どもたちがリラックスして受診できるかかりつけ医を目指したいという思いの両方を叶えたいと、このたびの「外来診療+訪問診療」を担うクリニック開業に至りました。
診察の際に心がけていることを教えてください。
わたしたちクリニックのスタッフはこれまで多くのこどもたちに関わってきましたので、病気の子どもの治療や看護についてはプロフェッショナルであると自負しています。
しかし、一方でひとりひとりのお子さんについては身近におられるご家族がプロフェッショナルであると考えています。またお子さんも成長とともに少しずつ自分自身のことを表現できるようになってきます。
したがって診療に際しては、わたしたちはご家族やお子さん自身が話しやすいようお手伝いし、その思いに十分耳を傾け、わたしたち医療者のひとりよがりにならないように心がけています。
院内の雰囲気やこだわっている部分についてお聞かせください。
院長の名前と体格から、クリニックのキャラクターはくまのお医者さんです。画家・絵本作家の武内祐人さんに優しい表情のくまをデザインしていただきました。クリニック内は子どももおとなもリラックスできる雰囲気の配色にしています。待合室はくまのお医者さんの住む森のイメージで壁に絵を描いてもらいました。
また、車椅子やストレッチャーで受診されても問題ないよう、クリニック全体はバリアフリーになっており、廊下やドア、トイレなどは広めの作りにしています。診察室は子どもが自由に行動できる大きめのスペースを確保しており、遊んでもらいながら発達の様子を観察できるよう工夫しています。
また、小児保健医療センター勤務中10年間ICD(院内感染制御医師)を務めた経験を生かして、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症にクリニック内でうつることがないよう、待合室を2つに分け、さらに待機・診察用の個室も複数設けています。
当クリニックを受診されたみなさんが、「今日、受診してよかった」と思っていただけるような診療を行っていきたい、また一期一会という言葉がありますが、今日みなさんにめぐりあえた「出会い」を大切にしていきたいと思っています。
今後の展望について、お聞かせください。
クリニックではありますが、病気のことだけでなく育児のこと、学校のこと、介護のことなどみなさんが気軽に立ち寄って相談してみようと思えるような場所になれたらと思います。
育児などで不安を抱えている保護者の方へ、メッセージをお願い致します。
育児にかかわっておられるご家族のみなさんが、ひとりで悩まず、わたしたちスタッフに何でもご相談ください。また診療のない日(日曜日など)に様々なテーマで子どものことに関する勉強会をクリニック内で開催します。(詳細はホームページでご案内します。)
テーマごとに集まっていただいて少人数で同じ悩みをかかえておられるご家族同士やクリニックスタッフと交流し、本音で語り合い、一緒に子どもの成長を楽しんでいきたいですね。